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常識を越えた本たち [Favorite/特別な本]

インドのタラブックス社といえば『The Night Life of Trees』(日本語版『夜の木』)がとても有名です。手すきの紙にシルクスクリーンで一枚ずつ手刷りされ、手製本された本は、芸術作品です。どんなに爆発的に本が売れても、会社を大きくすることなく、作品や従業員を守る精神を大切にされています。

夜の木

夜の木

  • 出版社/メーカー: タムラ堂
  • 発売日: 2012/07/17
  • メディア: 大型本
以前、ひとりでイタリアのボローニャブックフェアに必死でたどり着き、右も左も分からず不安の中、最初に手に取った本が、この『The Night Life of Trees』だったのです。心が震えた思い出の本。
その数か月後、代表のギータさんの来日を知り、連続5日間のワークショップに飛びつきました。
当時、まだ日本ではタラブックスの知名度が低かったからこそ…今となっては奇跡的。


ワークショップ1日目から、知らない世界の出版事情などあれこれ聞いて、目から鱗がポロポロこぼれ落ちました。
日本の図書館にあるような本が「本」だと思ったら大まちがいだと。
様々な形態の本、おもちゃのような本、見いたことない本…アイディアが豊かで、常識が覆されました。

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タラブックスのことは、前に書き留めてあったので、
今回は、本の紹介です。

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私が持ってる タラブックスの一部


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●『TUNAMI』(日本語版『つなみ』)

西ベンガル地域では、長い絵巻物をくるくる回しながら語っていく伝統があります。(この様子をビデオで拝見)このスタイルを出版できる形にして、蛇腹折で作られた絵本です。内容は、2004年スマトラ沖地震でおきた津波のこと。手にすると、圧倒されます。ずしっと心に響き、丁寧に作られたハンドメイドの味わいがあります。


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●『AN INDIAN BEACH』

ページをめくると…インドのビーチの朝から夜までの景色の移り変わりが描かれています。
カバーをはずすと…グルグルと終わりのない本になります。
それをひろげると…内側は海の中。外側はビーチでの人々。これ子どもが入って遊べる大きさです。

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すごい!よく考えられて面白い。


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●『Elephants Never Forget!』

2017年板橋美術館のタラブックス展では沢山の芸術的な本が展示され、購入もできました。あれこれ迷って、売れてる有名な本より、インスピレーションで決めた一冊の本。(一番安かった絵本)この時ギータさんと再会して、本を持っていったら「ワオ~、いい本選んだね!」と言われました。帰宅後、英文じっくり読んだら…本当にいい本でした。こんな内容の絵本が作れたらいいな。読み終わった後、タイトルページを生かしたギータさんのサインの意味にも感動。



南インド キッチンの旅

南インド キッチンの旅

  • 作者: 名穂, 齋藤
  • 出版社/メーカー: ブルーシープ
  • 発売日: 2018/11/01
  • メディア: 単行本

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●『Travels Through South Indian Kitchens』(日本語版『南インドキッチンの旅』)

作者の齋藤名穂さんとは夏のアトリエで出会いました。名穂さんは、建築家でデザイナーで英語がペラペラで、憧れの存在です。ワークショップ後ひとりで、南インドのタラブックス社へ。3か月位滞在して、この本を作ったそうです。南インドのいくつかの家庭に取材を繰り返し、料理を教わり、食事をしながら、ともに時間を過ごした日々が書かれています。普通の料理本ではなく、どんなキッチンで、どんな生活をして、どんな出来事があって、何を感じたか…今まで見たことないような方法の本です。読んでいると、本の中に入り込んでしまい、ドキドキ、一緒に旅をしている感覚におちいりました。



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●『Knock! Knock!』(日本語版『くまさんどこかな?』)

この本の作者のタカハシカオリさんも一緒に夏のアトリエで学んだ仲間です。ワークショップで発表した作品を練り上げて、インドのタラブックスまで直接持っていったそうです。そこからこの形態になるまで、大変だったことと思います。ドアをノックすると、パタパタと広がって、最後は…。新しい本の形を生み出しました。ほんとうに、すごいな~!


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●『THE BARBER'S DILEMMA AND MANMARU STREET』

この本の作者のおぐまこうきさんも、夏のアトリエで一緒に学んだひとりです。
半年くらいインドに行って、作ったそうです。
床屋さんのジレンマ…ってタイトルからして興味をそそられます。
とても発想が豊かで、アイディアがどんどん湧いてくるかんじで素晴らしいです。
私は固定概念にとらわれてしまって、抜け出そうとしても、もどってしまう。
そうだ、行き詰ったら、このピンクの本を思い出そう!


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タラブックスの出版本を見て…

本は、単に知識を伝えるだけのものではないこと、身に染みてわかりました。
もっと、自由に思考を広げてみよう。


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癒しの絵本「SECRETS OF THE MOUNTAIN」 [Favorite/特別な本]

「SECRETS OF THE MOUNTAIN」2018年

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日本語版「山は しっている」というタイトルで、鈴木出版から今年(2020年)出版されました。

その紹介で表紙の絵をひと目見ただけで、くぎ付けになってしまいました。
こんな素敵な絵が描けたらな…と。

地元の図書館に予約を入れ
待ちに待って ようやく手にできました。

山はしっている


中を開いて、またため息…

表紙を開いて…

見返しをめくって…
扉をめくると…
また別の扉が 目の前に広がって…

長い時間 それを繰り返していました。

文章を読むのが もったいない。
読み始めると 終わってしまうから…


絵本の2枚の扉を ただただ見つめていただけの一日目。
でも、それだけで絵本は、私を違う世界へ連れて行ってくれ、癒されました~

二日目に、やっと本文をめくって読みました。
絵だけでも 何を伝えたいのかわかる。
素敵な画家さんだな~と憧れです。

三日目からは、じっくり本の観察。
1枚目の扉と、裏表紙に 同じ絵が使われています。
始まりと終わりが同じ…
太古の昔から続いている自然の営み、繰り返される命が想像できます。

日本語版は図書館で借りたけど、返しちゃったので、やはり…原書が欲しくて、注文しました!
それがまた、1~2か月待てども待てどもイギリスから届かない…

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絵本、どこを旅していたのだろう…と思った矢先
ようやく原書 手にできました。

やはり洋書のデザイン、カッコいい!
タイトルがエンボスになっていて、いいな~

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本を待っている間に、あとさき塾からメールが届きました。
「絵本紹介」でこの本が紹介されてました。

すごい解説付きで!感動ひとしお!

やっぱり、いい絵本なんだな~
原書と翻訳本を比べるのも楽しいです。

**********

★日本語版はこれです!!

山はしっている

山はしっている

  • 出版社/メーカー: 鈴木出版
  • 発売日: 2020/03/06
  • メディア: 大型本
                                                  
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同じイラストレーターの本                                              
キツネの はじめての ふゆ

キツネの はじめての ふゆ

  • 出版社/メーカー: 鈴木出版
  • 発売日: 2018/10/05
  • メディア: 大型本
ガラスのなかのくじら

ガラスのなかのくじら

  • 出版社/メーカー: あすなろ書房
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: -
ビジュアル 世界一の昆虫 コンパクト版

ビジュアル 世界一の昆虫 コンパクト版

  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2020/04/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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The Night Life of Trees [Favorite/特別な本]

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Tara Books,インド

イタリアのボローニャブックフェアーに、初めて一人で行った日のこと

あまりの大きさに圧倒されて、どうしたらいいのか分からなくなり、不安がつのるばかり…
私は、広い海の上を ゆらゆら漂っている舟のよう。

その時、一番最初に手に取った本が 「The Night Life of Trees 」 でした。
ずっしりと手に馴染む 黒い紙の本。
シルクスクリーンの インクの香り。
引き込まれそうな 神秘的な絵。

今まで見たことのない絵本に すっかり魅了されてしまった。
そうだ、私は こういう出会いを求めて、イタリアまで来たのだ! と、我に返った。

大きな世界の市場で、初めて手にした一冊の本は、運命の本でした。

*********************

その年の夏・・・偶然か必然か・・・
あの本の編集者ギータ・ウォルフさんが、夏のアトリエの講師で、
私は、とびきりハードで 刺激的な一週間を 過ごすことになったのです。

本の歴史の講義から始まり、数日間で チームで本を制作し、発表。
ギータさんの指導すごかったです。

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個人作品のアドバイスくれました。


本に対しての概念が覆されました。

日本では、売れる本づくり、絵本の規制、コストや、人の目や様々なことが気になって、作ることが怖くなっていたのです。

*********************

あれから4年・・・
ギータさんと再会! うれしい~!

板橋区立美術館で、タラブックス展が開催されることになったのです。

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タラブックスのギータ・ウォルフさんとV・ギータさんのトーク

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初日のレセプションで 南インドの料理

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4年前のギータ組が制作したプレゼント

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お二人の歓迎会は イタリア料理 (ボローニャの…!)

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コクヨホールでのシンポジウムに参加しました。充実感。。。

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美しい本の裏側には、小さな出版社の たゆまぬ努力と 知恵と 工夫と 熱さが 隠されていたのです。

国際見本市では、その時に目に見える成果が無かったとしても、何年も月日が経ってから 繋がることもあるのだな・・・
そういえば、紙芝居も そうでした。イタリアでの出会いから。

本や人との出会いは、大切。 一生忘れることはないでしょう。


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魔法のなべと魔法のたま [Favorite/特別な本]

ホタルを見に、夜のドライブへ
何千匹ものホタルが飛び交う幻想的な光景は、魔法の国のようでした。
だけどホタルの光は、写真に映ってなかった…
あれは、幻だったのかな…

*******
もう20年位前のことですが、千葉の図書館で、棚から何気なく抜き出した1冊の絵本。
その本を開いたとたん、体じゅうに電気が走ったような衝撃を受けました。

心の奥底で探していたものに、やっと巡り合えたような感覚。
私の大好きなヨーロッパの色、香り、空気が伝わってくる絵。

すぐその本を借りて、家でずっと眺めていました。
それからも、何度も何度も、返しては借りるの繰り返し…
絶版本だったから、もう手に入らなかった。

それが、ドゥシャン・カーライさん絵の「魔法のなべと魔法のたま」

私の生き方を変えた本です。
この時 「私も、絵本描こう」と決めました。
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なぜ、こんなに魅かれるのかわからない。
この絵を描いた人が、どこの誰だかわからない。
現在生きているのか、過去の人なのかさえわからない。
誰に聞いても、知らないという。
何もわからないけれど、憧れの画家。

*******
それから何年もの時が流れ・・・

ドゥシャン・カーライさんが来日すると聞きました!
武蔵野美術大学で、絵本学会の講演に。私は 遠くから拝聴。
カーライさんは、スロバキアのブラティスラヴァ美術大学の教授であり、世界的な絵本作家だと知る。
あの頃 日本では、まだ知名度が低かっただけなのです。

同じ時代を 生きていた人なんだ。
遠いけど、本物に出会えた奇跡。

*******
そのまた何年か後の2009年に・・・
なんと、板橋美術館冬のアトリエで、カーライ先生の指導を受けるという機会に恵まれました。
目の前にカーライ先生がいて、直接お話できて、アドバイスもらえて、勇気もらえて…
信じられない、ふわふわ 地に足がついていない。
カーライ先生が熱弁した瞬間、何度か、先生の頭から金色の光が ミストシャワーのごとく出たから、不思議…
これはやっぱり夢かと思い…
腕をギュッと つねってみたら、い、痛かった。
これ現実なんだ。

夢か現か よくわからなくても…直接いただいた言葉だけは、忘れません。

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最終日、ご夫婦へ寄せ書き。少しだけ覚えたスロバキア語で。


*******

あの日、図書館の棚から偶然抜き出した1冊の本。
思っていると、本当に繋がっていくんだね。

目には見えない糸で。
奇跡ではなくて軌跡。

*******
つかもうとしても つかめない、ホタルの光は…
幻のようだけど、幻じゃない。
ちゃんとそこに 存在していたこと。


**********

アンデルセン童話全集Ⅰ

アンデルセン童話全集Ⅰ

  • 作者: ハンス・クリスチャン アンデルセン
  • 出版社/メーカー: 西村書店
  • 発売日: 2011/08/03
  • メディア: 大型本


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ひとくぎりのブログ本 [Favorite/特別な本]

ブログを初めて、ちょうど5年が経ちました。

そして、大きな誕生日がやってきたことで、(もう半世紀も生きています)
この3月で ひとくぎりをつけて、ブログを1冊の本にしました。 

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ブログ始めたのは、絵本にまつわる思いを残すため。だから、25年ぐらい前からの私の思いが ぎゅっと凝縮されたような本になりました。

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自分のためのブログ
読み返してみたら…
わ~っ、こんなこと書いてた…昔書いたことは、もう忘れていました。 

書くことで、気持ちが 整理されていったので、それでいいのだと思う。

だけど、どんなに月日が流れても、変わらない思いもあるけれどね。

*****

昨年、山間部に引っ越して来た時は、 ネットが通じず、
自分のブログを見ることさえ できませんでした。

今まで当たり前と思っていたことが、当たり前ではないことに気づかされます。

どんなにデジタル社会になっても、信頼できるのは やっぱり紙であり、
私は、紙の本を大切にしていきたいです。

***** 

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昔のは、読み返すのも ドキドキ…

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最近のは、記憶も鮮明。 
いつかは遠い過去になっていくのかな。

*****

 これからも変わらず マイペースで。

*****

昔の記事読み返して… 恥ずかしいので、ブログ記事 どんどん消去しちゃってます。
ごめんなさい。

 

 


タグ:ブログ本
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はらぺこあおむし [Favorite/特別な本]

エリック・カール

はらぺこあおむし

 

 

 

 

私の絵本の原点。

今では、みんなに愛されている おなじみの絵本ですが、
私が 最初に目にしたのは、高校生の時。
日本で この本の知名度が低かった ウン十年も大昔。

学校帰りに、友達と駅ビルを歩いていたら、偶然絵本展。

その人が一体誰なのか、全く知らないけれど、
目に映った 鮮やかな力強い絵に引き寄せられて、ついふらりと…

順番に見ていくと、物語になっていて、感動しました。
でも、高校時代のそんなひと時は、もうとっくに忘れ去り―。
時は過ぎ・・・

*

結婚して・・・
我が子が生まれ・・・
喜びで、絵本コーナーに立ち寄った時のこと、
ある一冊の絵本に、くぎ付けになりました。

心が ふるえました。
見覚えのある 鮮やかな色彩。。。
突然蘇る あの時の情景。


手にした本は「はらぺこあおむし
そうです! 高校生の時見た絵は、紛れもなくこの絵本!

脳裏に焼き付いていた 色と形。

即買い。 この時にはすでに 人気絵本。
初めて買った絵本は、いつも子供の成長と共にありました。

絵本には、表面の美しさだけでなく、見る人の遠い記憶を呼び覚ます
不思議な力が潜んでいるのです。
**********

「はらぺこあおむし」は、
小さく醜いあおむしが、最後には美しい蝶になる話。

蝶が羽を広げるように、小さな子どもたちが成長して、
いつか才能を広げて 飛び立つイメージと重なっていきます。

出版当初は、反響がなく、あまり人気のない本が、
エリック・カールが、ボローニャ国際児童図書展で受賞したことで、
この絵本に、一気に注目が集まるようになったそうです。

本とおもちゃの中間にある この本の 穴があいてるアイディアは、
たまたま パンチで開けた紙の穴を見て思いついた 偶然の産物。

最初は、自分自身が楽しむために作ったとのこと。
それが、いつしか見る人との間に 共感が生まれていくのでしょう。


**********
エリック・カールのことば

「まわりの人が どう思うか気にして創作するのではなく、
 自分が 本当にやりたいことをやりなさい。
 それはいつか誰かにつながって、理解されるようになっていく。」

**********

心に沁みます。。。


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しろいうさぎとくろいうさぎ [Favorite/特別な本]


The Rabbits' Wedding

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「いつも いつまでも きみといっしょにいたい」

という黒いうさぎの願いは叶い、結婚式をあげるシンプルなストーリー。
モノクロの世界は、人生最大の幸せに包まれて、彩られていく。。。


この絵本には、「愛」とか「好き」という言葉が一切でてこない。
「いつまでも」という未来への表現だけで すべてが伝わるのです。

作者のガース・ウイリアムズさんは、どうしてこんなに 女心をわかっているのでしょう。
女の子は、いつも待っているのです。
「いつも、いつまでも・・・」


だけど私、単純なお話の中には、暗号やメッセージが隠されているのではないかと、
ついつい裏を 探ってしまう癖。

白黒のウサギの意味するものは、今もなお根強く残るアメリカの人種問題や、
異文化の融合などを語っているのではないだろうか…。

と、勝手に想像力を働かせていたら、
偶然 目にした雑誌に 作者のインタビューが 載っていました。

「この絵本、当初は社会問題になったけど…
(なんだ、同じこと考えてる人たちがいたのね)
うさぎの色を、白と黒にしたのは、
ただ、2匹をわかりやすく区別しただけのこと。
本当に純粋なお話のつもりで作った。」
と書かれてた。


衝撃的でした。
絵本にではなく、自分の思考の歪みに。

人の心の裏側を 深読みしても、いいことはない。
もっと、ピュアに。。。

*****
洋書の紙の手触りが好き

The Rabbits' Wedding

The Rabbits' Wedding

  • 作者: Garth Williams
  • 出版社/メーカー: HarperCollins
  • 発売日: 1958/04/30
  • メディア: ハードカバー

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*******

「いつも いつまでも…」
待っていたのです。

そして「いまでも」
待っているのですよ。


タグ:絵本
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不思議の国のアリス [Favorite/特別な本]

Alice's Adventures in Wonderland
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「黙って持っていって、ごめんなさい。」

と、娘のランドセルから出てきたのが、このアリスのpop-up 絵本。
とうの昔、千葉に引っ越して来たばかりの出来事。。。

棚の高い所に しまい込んでいた 私の大切な絵本。
娘は その本をみつけて、こっそり学校へ持って行ってしまったのだ。

聞くと、授業で 「飛び出すカード」を作るから、見本になるように、
この素敵な「飛び出す 絵本」を、みんなに見せてあげたかったと。

先生が、この本を紹介したら、クラスのみんなが集まってきて、とても喜んでくれたそう。
話を聞いてて、感動。。。

知らない土地に引っ越してきたばかりで、転校生として不安のなか、
本が、仲間と解け合う ツールになったようだ。

本には、人と人をつなぐ役割もあるんだと、改めて感じた日。

*******

このアリスの絵本は特別な本。開くと…
ずっと 胸の奥に しまい込んでいた気持ちを 思い出します。

それは、私の 長い片思い。
ふと蘇る 苦しい気持ち…。
願いは叶わなかったけれど、短く楽しい思い出は、宝物。

*******

「ねぇママ、知ってた?このお話、夢だったんだよ。」
知ってるよ。 楽しい出来事は、全部夢の中だったって。

だけどやっぱり 絵本の結末が、夢落ちとは、残念かな。

*******

最近、ずっと気になっていた本を借りてみた。
アリスの原文。 ルイス・キャロルの手書き文字の。
辞書引いて丁寧に訳してみた。
最後のページだけね。

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そしたら、すごい発見!
なんて、素敵!
単なる夢落ち じゃなかったよ。
長年の謎が解けたよう。。。

作者が、一番 伝えたかったことが、
ここに集約されているのではないだろうか。

ほとんどのアリス絵本では、カットされてしまっている、大事な最後の場面。
それは・・・
お姉さんが、大人になったアリスを想像すること。

『キラキラした少女時代は短い。
幸せな日々は、長くは続かない。
だけど、昔のままの純真で優しい心を持ち続けることで、
きっと、年を重ねても、豊かな人生を送れるのでしょう。』

*******

この絵本は、もう シミだらけになってしまった。
時の流れともに すべてが風化していく…
だけどいつか、私がしわだらけのお婆さんになっても、
ときめいた あの頃の気持ちは、決して忘れないでしょう。

きっと、きっと・・・

心の持ち方ひとつで、豊かな人生になっていく。

*******


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ぶれない [Favorite/特別な本]

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ぶれない―骨太に、自分を耕す方法
平山郁夫




何度も読み返した元気になれる本。

この本は、画家として、また組織のトップとしての
自身の経験をもとにつづられていますが、
すべての職業の人や、今悩んでる人にも通じる
人生を豊かに生きる方法。

平山郁夫さんは、人間を超越した存在かと思っていましたが、
そこまで到達するのに、人の何倍も鍛錬してきたことがわかります。

平山郁夫さんの描く絵は、見る人の心を
時空を超えて、旅させてくれます。
絵から感じる魂の叫びの意味は、この本と連結しています。

心の中の甘えを断ち切り、志を高く持つこと。
わかっていても楽な方へ流れていくのが、世の常ですが、
厳しく自分を律し、貪欲に勉強を続けてきた人の言葉には、
重みがあります。

平山郁夫さんが、この世の人でなくなっても、
残してくれた足跡は、生きる上での道しるべです。





タグ: 平山郁夫
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ハーメルンの笛吹き [Favorite/特別な本]

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   (左)ケイト・グリーナウェイ 絵    (右)エロール・ル・カイン 絵

原宿で「アイドル出没」のデマが広がり、若者が殺到。ケガ人続出の大騒動。

この信じがたいニュースの映像から、
「ハーメルンの笛吹き」を思い浮かべました。



130人の子どもたちが忽然と姿を消した
1284年6月26日、ドイツのハーメルンで起こった不思議な事件。


「楽しく素晴らしい所へ連れて行ってあげる」
との笛吹き男の言葉に憑かれ、
次から次へと子どもたちは後をついて行きました。

だだひとり残されたのは、足の悪い子ども。
みんなと一緒に楽園について行けなかったことを
いつまでも、ひどく悲しみました。



面白そうな噂が流れると、一斉にそちらへ
ワーッと流れていく。
誰かがイイと言えば、みんな欲しがる。
時代は変わっても、同じことが繰返されています。
情報網が発達している現代、さらに増長されているように感じます。
「ハーメルンの笛吹き」は、
そんな現代人への警告であるとも言えるでしょう。


足の悪い子は、私自身に投影されます。
いつも最後。人に追いつけない。
深層の悲しみは誰にもわかってもらえない。

だけど、足の悪い子には、
ただひとり、人々に真実を伝えるという
とても大切な役割を担っています。

みんなと同じでなくてもいいのです。


その事件は、ドイツで伝承されていき、
19世紀後半には、ケイト・グリーナウェイなどによる挿絵で、絵本になりました。
絵本の力は偉大で、700年以上も前の恐ろしい事件が、
世界中の人々に愛され、語り継がれていくお話となったのです。


130人の子どもたちは誰も、町には帰って来なかったけれど、
本当にみんな、楽しく幸せな日々を送っていたのでしょうか。
私は思います。そこは楽園という名の地獄であったと。




ハーメルンの笛ふき

ハーメルンの笛ふき

  • 作者: サラ コリン
  • 出版社/メーカー: ほるぷ出版
  • 発売日: 1989/11
  • メディア: 大型本




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