ハーメルンの笛吹き [Favorite/特別な本]
(左)ケイト・グリーナウェイ 絵 (右)エロール・ル・カイン 絵
原宿で「アイドル出没」のデマが広がり、若者が殺到。ケガ人続出の大騒動。
この信じがたいニュースの映像から、
「ハーメルンの笛吹き」を思い浮かべました。
130人の子どもたちが忽然と姿を消した
1284年6月26日、ドイツのハーメルンで起こった不思議な事件。
「楽しく素晴らしい所へ連れて行ってあげる」
との笛吹き男の言葉に憑かれ、
次から次へと子どもたちは後をついて行きました。
だだひとり残されたのは、足の悪い子ども。
みんなと一緒に楽園について行けなかったことを
いつまでも、ひどく悲しみました。
面白そうな噂が流れると、一斉にそちらへ
ワーッと流れていく。
誰かがイイと言えば、みんな欲しがる。
時代は変わっても、同じことが繰返されています。
情報網が発達している現代、さらに増長されているように感じます。
「ハーメルンの笛吹き」は、
そんな現代人への警告であるとも言えるでしょう。
足の悪い子は、私自身に投影されます。
いつも最後。人に追いつけない。
深層の悲しみは誰にもわかってもらえない。
だけど、足の悪い子には、
ただひとり、人々に真実を伝えるという
とても大切な役割を担っています。
みんなと同じでなくてもいいのです。
その事件は、ドイツで伝承されていき、
19世紀後半には、ケイト・グリーナウェイなどによる挿絵で、絵本になりました。
絵本の力は偉大で、700年以上も前の恐ろしい事件が、
世界中の人々に愛され、語り継がれていくお話となったのです。
130人の子どもたちは誰も、町には帰って来なかったけれど、
本当にみんな、楽しく幸せな日々を送っていたのでしょうか。
私は思います。そこは楽園という名の地獄であったと。
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